生活に役立つ哲学的思考

・カント:実践理性批判
→カントは人間の義務を教えるものとして仮言命法と定言命法を区別した。前者は条件的義務で、希望や条件によって義務の発生やそれに従うべきかどうかが変わってくる。後者は無条件に誰もが従わなければならない義務で、全ての人間が守らなければ全員に不利益になるような義務のことである。後者はとくに利己的な判断を否定することが出来る考え方で、日本人が長時間労働によって疲弊しているにも関わらず相変わらず何も考えずにそれをよしとしている風潮などはそれにあたるだろう。また、子どもの屁理屈である静かにしないといけない理由がわからないというような問いも定言命法で否定できる。これらを総じて理性とする。

 

・カント:判断力批判
→カントは、自分の想像力が広がり追いついていない状況を大自然や宇宙の神々しさの経験を崇高の経験と呼んだ。崇高を経験しているときは全体の流れを阻害せず適切なものが然るべき場所に置かれた宇宙全体に及ぶ合目的性の流れに乗っている。知識とその総体を超越し自然全体の方向性を示す判断が可能となる。
 合目的性が発揮されるもう一つの場面が芸術だ。主観であるがその対象に触れれば誰もが崇高の経験を味わえるとして美的判断は主観的普遍性であるとカントは言った。想像力の産物である美は真偽や善悪とは無関係である。これは個人の美徳にも言えることで行動指針としての実用的哲学はこの立場から判断力批判を否定する立場に対しても支持出来るだろう。

 

・ハイデガー:死への存在
→ハイデガーは日常の自分は常に交換可能だとした。本来はかけがえのない存在であるはずの自分は客観的に見れば大多数の人間と交換可能であるとしたのである。しかし、自分の死を死ぬこと、つまり自分の死を変わってもらうことだけは交換不可能であり、その死と向き合うことで本来の自分を回復することが出来ると考えた。

 

・JJギブソン:アフォーダンス
→ギブソンは行動を誘発する性質のことをアフォーダンスとし、これは周囲に満ちていると考えた。この考え方は自立歩行型ロボットなど人間を模した人工知能などにも応用されている。

 

・ニーチェ:パースペクティヴィズム
→直前に見えた固定観念が昔から確固たる存在として存在するという考え方。演歌が生まれたのは昭和50年ごろの話なのにそれを日本の心と言ってしまうようなことはこれにあたる。関連して歴史学者のホブズボームは「伝統は創造される」と言った。

 

・フーコー:生存の美学
→フーコーは、意味が一期一会の状況で自発的に発生しそれを積み上げるという考え方を生存の美学とした。

 

・複雑系
→複雑系はフィードバックループ(ミクロの動きがマクロの構造を生み出し、それがまた、ミクロの動きを誘発しマクロ構造が再生産・強化されること)によって偶然に創発する自己組織系のことで、エンジニアなら凡そ知っているであろう割れ窓理論は複雑系と言われている。

 

 

講師 大西

2019年10月
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